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教育コラム#10_“気持ちを伝える”心のスキンシップ

こんにちは。
関西創価小学校 参事の三島千晃です。

「秋空や 子らに追われし 赤とんぼ」
本校には「東中振記念自然観察園」という観察園があります。その中の農園では初夏に「きょうだい活動」で植えたさつまいもが育ち、5年生が手掛けた黄金色に輝く稲も大きく実っています。
抜けるような青空を背景に、赤トンボが飛びかう風景は一幅の絵のようです。
秋はこうした情緒漂う“実りの季節”であると同時に、秋台風に代表されるような“自然災害の時季”でもあります。
「晴れの日もあれば、雨の日もある」との言葉があるように、子育ても、そうした自然と似ているのかも知れません。



◆気持ちが 伝わるような かかわりを

「何度も言っているのに!」
「なぜ、いつもそうなの!」   
こんな言葉を子どもに投げかけながら、叱るたびに罪悪感をもってしまう体験は、親である誰もが持つもの。私も例外ではありません。

では、叱らなければよい子が育つかと言うと、叱られないで立派に育った子はいません。
『エミール』の著者で、フランスの思想家ルソーは、「子どもを不幸にするいちばん確実な方法は何か。それは、いつでも、なんでも手に入れられるようにしてやることである」と述べています。
子育てや教育で大事なことは「愛情」。無償の愛を受けた子は、秋の日差しをたっぷり受けて黄金色に輝く稲穂のように、実りという見事な“成長の姿”を見せます。
ただ、その愛情には「厳しさ」もあることを忘れてはなりません。
大切なのは「叱らないようにすること」ではなく、「子どもに気持ちが伝わるようなかかわり方をすること」だと思うのです。

楽しい  いもほり

◆つい言いたくなる 4つのNGワード

日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんは、つい言いたくなるNGワードを4種類挙げています。

1つ目のNGワード「前もそうだった」「何度言わせるの」という言葉です。
「今さら前のことを言われても……」「何度と言っても2度か3度だと思うんだけど……」。
こんな子どもたちの心の声も聞こえてきそうです。

2つ目のNGワード「なんで?」「どうして?」という言葉
例えば、食事中に食べ物をこぼしてしまった時に「なんでこぼしたの?」「どうしてこぼしたの?」ときつく問い詰められても、子どもは黙ってしまいます。
それは、どうしてという理由がよくわからないからです。親もその理由が知りたい訳じゃありませんよね。

そして、3つ目のNGワード「いつも」「絶対」「必ず」という言葉です。
これは、相手を決めつけたり、怒りを強くしたりする言葉です。
子どもは、心の中で「いつもじゃないのに……」と思っていることが多いのではないでしょうか。

最後、4つ目のNGワード「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」という言葉です。
これらの言葉は“程度”を表します。ただ、程度は人によって基準が違います。だから、気持ちが正しく伝わりにくいのです。

◆安心感は “心のスキンシップ”

世の中は、「ほめて育てることが大切だ」と言われています。
逆に「ほめているけど、少しも伸びないし、言うこともきかないんです」という相談もよく受けます。
しかし、「ほめる」「認める」に代表される「愛情」は、子育てにはとても大事なことです。

「ほめる」ことは、子どものよいところや、できることを見つけてあげるという見方もできます。
子ども自身が気付いていなくても、「ほめる」ことでそのことを伝えてあげる。そのように、子どもを観察してよく見てあげることが「愛情」です。
子どもにとって、「愛情」は「安心感」とも言い替えることができます。
安心感は“心のスキンシップ”です。「自分は愛されている」「自分は必要とされている」という実感が、子どもの心を安定させます。
幼いうちに注がれた「愛情」が、その子の「生きる力」となって、その子の将来を支え、未来を開いていきます。

◆厳しさ と 愛情

また、大事なときに「叱る」ことも大切です。
そういった意味で、厳しさに裏付けられた「愛情」も必要なのです。

作家の中谷彰宏さんは、
「『ほめて育てたほうがいいか』『叱って育てたほうがいいか』。それとも『ほめて、かつ叱ったほうがいいか』。この質問は正しくありません。大切なのは『誰が』です。『叱るのはいいが、怒ってはいけない』。これも間違っていませんが、肝心なことが抜けています。それは『誰が』です。(趣旨)」。
この主張は、大切な視点のひとつだと感じます。

もちろん、感情に任せて怒ってばかりではいけませんが、大切なのは子どもとの「信頼関係」です。
これは、親と子、教師と児童でも同じです。
「信頼」のことを「橋を架ける」という意味で「ラポール」と言います。信頼する人、尊敬する人、好きな人から「ほめられる」「認められる」から嬉しいのです。
また、その人からたとえ厳しく注意されたり、叱られたりしても納得ができるのです。
ほめる、叱るという行為もこうした信頼関係の上に成り立っているのです。
以下に成長につなげる「かかわり方」のポイントを紹介しておきましょう。

◆生涯で 最も感銘を受けた言葉

創価教育の創始者である牧口常三郎先生が、「生涯で最も感銘を受けた」という言葉を池田先生が紹介されたことがあります。
それは、ノーベル賞として有名なアルフレッド・ノーベルの「遺産は相続することが出来るが、幸福は相続することが出来ぬ」という言葉です。

いつの時代にあっても、最愛の我が子に残せる最高の“遺産”とは、親の信念を貫き、懸命に生き抜いた姿そのものではないでしょうか。

虫の音、ススキ、月、さつまいも、運動会、マツタケ、コスモス、モミジ……。
秋の深まりとともに、人としての生き方も深めていきたいと思う日々です。

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