教育コラム#4_何これ?新しいウルトラマン?
こんにちは。
関西創価小学校 参事の三島千晃です。
今回は、“子どもの見方”をテーマに「視点を変える」「視点を上げる」ということを考えてみたいと思います。
視点とは「視線の注がれるところ、物事を見たり考えたりする観点のこと」です。したがって子育てにおける視点とは、わが子にどのような視線を注ぎ、どのような観点から見ているのかということになります。
◆先生! 全部それお魚だよ!
教員を長く続けていると、様々な子どもと出会います。
あるとき、「海にいる生き物」をテーマに絵を描かせたことがありました。すると、一人の男の子がこんな絵を描いたのです。
一瞬、目を疑った私は、「何これ?新しいウルトラマン?」と尋ねると「先生、何言ってるの。魚だよ、お魚!」と返答。
「これは、お魚を前から見たところ!」と教えてくれました。
そして、魚好きの彼は「これがお魚を上から見たところ。後ろから見るとこうだよ」と次々と魚の絵を得意気に描いてくれたのです。
「なるほど・・・。これは全部、魚に違いない」と納得したのを覚えています。私の頭の中にイメージする魚と言えば、頭が左で、尻尾が右の横向きの姿。
でも、彼がイメージする魚の姿は全く違いました。
このことが、視点について深く考えるようになった出来事です。
◆その1 見方を変える! 「いいかげん」は「良い加減」
育児漫画家・絵本作家である高野優さんが、英語の面白い名言を紹介していました。
「最初の子が土を食べたら、親は慌てて医者に電話をする。
2番目の子が土を食べたら、親は子の口を洗う。
3番目の子が土を食べたら、親は『ランチいらないかも』と思う」
また、この名言を紹介しながら、ご自身の三姉妹の子育てを振り返られ、
「長女の子育ては、毎日が緊張の連続。起きている時は誤飲をしないように、けがをしないようにとハラハラして、眠っている時は息をしているかどうか心配で、呼吸の確認をしてばかり。それが、次女の時は“なるようになる”、三女の時は“笑っていれば十分”と思うほどいいかげんに。
『いいかげん』という言葉は否定的に聞こえるけれど、実は『良い加減』と肯定的な意味もあるらしい。
疲れてヘトヘトな方、一緒に肩の力を抜いて『いいかげん』になってみませんか?」と。
この話を聞いて、その通り!と笑みを浮かべた子育ての先輩も多いはずです。一生懸命になるあまり、偏った見方で子どもに接することもよくあることです。 「ほったらかし」と「かまいすぎ」のバランスは、子育てにおいて気をつけたいところですが、「良い加減」になる「いいかげんさ」も大切にしたいですね。
◆その2 見方を上げる! 階段を一歩上ったつもりで
私はよく屋上に行きます。
特に初夏が好きです。この季節は、青空をバックに新緑の森が広がり、心地よい薫風が肌に触れて、まるで心が広がっていくような気持ちになります。
高い所から景色を眺めると、さっきまでこだわっていた問題が小さく感じられることがあります。不思議なものです。
時には、悩みを抱えた子どもとの相談場所として屋上を利用することもありました。心のモヤモヤを一通り聴いた上で、一緒に遠くの山々や青空を見ながら大きく深呼吸をします。すると、すーっと心が落ち着いていくのです。
「深呼吸」は、無意識に行っている「呼吸(息)」とは違い、意識的に行うもの。「息」は「自らの心」と書くことを思えば、深呼吸は、深く自らの心を振り返ることとも言えます。
しばらく話をすると、「うん。先生、がんばってみる!」と答えてくれたことが何度もあったことを思い出します。
悩んだときは、階段を一歩上ったつもりで視点を上げ、目の前の子どもを眺めると、新しい発見や解決の方途が見つかると思います。
◆その3 “見方”をchangeして最高の“味方” に
子どもも大人も結果を出すことは大事ですが、それ以上にその過程を知っておいてほしいものです。
プロセスを評価する目を持つためには、相手(子ども)の行動をよく見ていくことが大切です。
「こんなこともできるようになったんだ」
「そんなふうに感じていたんだ」など、そこには様々な気付きがあるはずです。
そしてもう一つ。プロセスを評価するには、その行為を認める目をもつということです。
「認める」とは、「言」に「忍」と書きます。言いたいことも時にはグッと堪忍して、その子がたどったプロセスをよく見ながら受け止めていくことが、子どもの可能性を引き出していくのです。
最初は上手くいかないことも多いでしょうが、「子どもにとって一番適切なタイミングで、最高の励ましの言葉をかけてあげられる自分になろう」と私も取り組んでいます。
“見方” が変わることで、子どもとの信頼関係が深まっていきます。
“見方”をchangeして、子どもの最高の“味方” になっていきましょう。