教育コラム#12_“思いやりの心”を育む
こんにちは。
関西創価小学校 参事の三島千晃です。
関西創価小学校には、創立者池田先生が示された「モットー」があります。
今回は、この中の「思いやりのある子」について考えてみたいと思います。
◆「思いやり」とは何か?
「思いやり」とは何でしょうか。
創立者は、「思いやりとは『思いを遣る』ことです。つまり思いを他の人まで差し向けることです。慈愛を馳せることです。思いを遠くに遣った分だけ、私たちの心は広がります」(『池田大作名言100選』)と、述べられています。
また、「思いやりのある子」とは、「他者を大切にする心を持つ子どもです。これは人格をつくるうえで、最も大切な要件となります」と、『新・人間革命』「若芽」の章に綴られています。
◆「思いやりの心」は、生き方の基盤
AIの進歩など、私たちを取り巻く環境は日々変化しています。
しかし、どんな社会や時代になっても、「人間関係」を築く力は不可欠です。
こうした力、特に「思いやりの心」は、幼少期から育まれます。
これらの心身の力が生活と生き方の基盤となります。
◆「思いやりの心」の育て方は?
では、どうすれば「思いやりの心」を育てることができるのでしょうか。
児童精神科医の佐々木正美さんは、「分かち合う力」を提唱しています。
これを基に、思いやりの心について考えてみましょう。
「コミュニケーション」とは、お互いの「喜びを分かち合う力」です。
この力は、同時に「悲しみを分かち合う力」でもあり、それが「思いやりの心」です。
子どもが喜ぶことを一緒に楽しむことで、「喜びを分かち合う力」が育ちます。乳児期の子どもは、親が彼らの楽しみを共有し、一緒に笑うことでさらに喜びます。こうした経験を通じて、子どもたちは他の人と一緒に楽しむことの喜びを知るようになります。お互いに喜びを共有することは、人としての最大の喜びであり、絆の基盤です。喜びを共有する力が育つと、次第に「悲しみを分かち合う力」も育ってきます。
佐々木さんは、「悲しみを分かち合う力」は意識的には育てられないと言います。子どもが喜ぶことを共有し、一緒に楽しむ時間を通じて、悲しみを分かち合う力が育まれます。
他者の心の痛みや悲しみを理解する「思いやりの心」は、一緒に喜ぶことを知ることから生まれるのです。
◆「読み聞かせ」が効果的!
「思いやりの心」を育てるためには、読み聞かせが非常に効果的です。
読み聞かせの言葉には、「体温」があります。
その温かみや声の響きを通じて、感受性が豊かに育まれ、喜びや他人の痛みを理解する能力が高まります。
◆「運動会」でのエピソード
「思いやり」について、運動会でのあるエピソードが思い出されます。
1年生の初めての運動会。
その男の子は練習に熱心に取り組んでいました。しかし、当日、彼は喘息のため競技に参加できず、みんなから離れた場所で見学することになりました。
競技が進行し、男の子の所属するチームは勝利して、喜びの声で溢れました。しかし、男の子は、喜びを共有できず、寂しい気持ちになっていました。
そのとき、閉会式を終え教室に戻るクラスの列から、一人の男の子が彼の方へ走って来ました。
そして、彼に「一緒に行こう」と優しく声をかけ、肩を組んで教室に向かったのです。青空の下、二人の小さな後ろ姿が輝いていました。
この友情は二人が社会人になった今も続いています。
このような「悲しみを分かち合う力」が、「思いやりの心」を育み、生活と生き方の基盤となっていると感じました。
◆子育ては、“山登り”のようなもの
創立者は、次のように語っています。
「専門家であっても、一筋縄でいかないのが、子育てなのです。ですから悩みがあっても、どんどん悪いほうへふさぎこんで考えてしまうよりも“子育てに苦労はつきもの”と、たくましき『楽観主義』でいくほうが、どれだけ価値的か分からない。朗らかに明るく行くことです。子育ては、ある意味で“山登り”のようなものです。頂上までには、何度も苦しいことがある。しかし、それを一つひとつ乗り越えていけば、やがて視界が開け、美しい光景が見えてくるようになる。そうして、山頂にたどりつけば、つらかったこともすべて楽しい足跡だったと思い返すことができるものです」 (『21世紀への母と子を語る』)
毎日、希望を持って前進したいですね。
このコラムが、子育ての悩みを抱える皆さんの心に少しでも光を灯し、明日への一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。お子様の健やかな成長が、私の何よりの喜びです。